2015年5月24日

感謝祭の赤旗は左翼ではない、精霊だ

五旬祭、ペンテコステ po. Pentecostes

日本で赤旗と言ったら共産党、ブラジルにも共産党はある。
一つだけでなく二つもある。

古い方はPartido Comunista Brasileiroといい、略称はPCB、創立は1922年である。
新しい方はPartido Comunista do Brasil、その歴史を見るとPCBから1962年に分かれてできたものである。
そのために名称は'Brasileiro'と似て異なる'do Brasil'を使っている。
略称はPCdoBペーセードベーと呼ばれる。
内部分裂は左翼のお家芸なのだろう。

泡沫候補とも言うが、独自候補を立てて玉砕するガチガチの古いPCBと比べて、新生PCdoBはより柔軟に連立を組む、まあ日和ってるのかも知れないが、現在の連邦政府の構成党であり、ワールドカップ時のスポーツ相で有名になり現在科学技術相であるAldo Rebelo氏はPCdoBに属する。
2014年の総選挙では党から初めての州知事、Flávio Dinoマラニョン(Maranhão)州知事を選出しているが、連邦政権党PTの仇敵PSDBの副知事とコンビを組んでいるのでわけがわからない。
現実主義の結果なのだろう。

ブラジル連邦政府と言ったら、共和国大統領を選出している労働者党Partido dos Trabalhadoresであるが、やはり赤旗である。

昨日テレビのニュースで見たデモは、参加者が赤い旗を掲げ赤いスカーフをつけている。
最近汚職、経済不振、綻びを繕うための増税緊縮政策で人気の落ちている労働者党政権を激励する官製デモか。
よく見るとデモの中に、野菜を満載した何台もの旧式の2頭立て牛車を、きれいな飾りをつけた牛たちが引いている。

暦は5月の下旬になったが、北半球の暦にあわせ6ヶ月ずらすと11月下旬になる。
カナダでは10月第2月曜日、アメリカ合衆国では11月第4木曜日が感謝祭になっている。
こちらはいま秋、ちょうど感謝祭の季節に重なる。

デモと早とちりしたのは、実はサンパウロ大都市圏の東方で、日系人も多く住むモジ・ダス・クルゼス(Mogi das Cruzes)の収穫を祝う行列だったのだ。
4世紀前から、というとブラジルという国が成立(1822年独立宣言)するずっと以前から続いている収穫感謝のパレードは、キリスト教行事ペンテコステの行列という。

そう、今日日曜日は五旬祭、ペンテコステ(Pentecostes)の日だ。
イエス・キリスト復活の49日後の日曜日については、聖書の使徒行伝あるいは使徒言行録に書いてある。

印象的なところを一部だけ引用する。
また、舌のようなものが、炎のように分れて現れ、ひとりびとりの上にとどまった。(使徒言行録2-3)
すると、一同は聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、いろいろの他国の言葉で語り出した。(2-4)

ニュースで言っていたのを聞いて、なるほどと思うことがあった。
「この日に精霊が降りてきて、意気地なしだった使徒たちが急に強くなった」と言った。
カトリック国であるブラジルのテレビが何気なく教えてくれた。

信心があるわけではない私が聖書を読んで不思議に思っていたのが、どうしてイエスの弟子たちは、何よりも大切な師が捕まり磔にされるときに散り散りに逃げ去ったのか。
情けないぞ、と思うだが、だからこそペドロ(ペテロ)の三度の否認とかのストーリーが語られ、涙なしに聞けない名作マタイ受難曲やヨハネ受難曲が生まれたともいえる。

冷静に考えてみれば、弟子たちがイエスの側から離れられなくて一網打尽で捕まって一緒に処刑されてしまったり、師を一人だけ引き渡すのは無念だとローマ兵と戦って全員玉砕したりしたら、話はそこで終わってしまって聖書が書かれることはなく、現在の世界と全く異なるバラレルワールドになってしまっただろう。

イエスの側にいたから強い信仰をもてるのではない。
そうだったらイエスなき時代に生きるものたちは誰も信仰をもてないではないか。
そうではない、イエスの側にいた時は弱虫だった弟子たちが、精霊の導きによって強い信仰を持てるようになった。
イエスなき世のわれわれにもこれならできそうだ、と思わせてくれるのが大切なのだ。
それが神の思し召しなのだ。

ペンテコステのできごとは教会の始まりと言われている。
もちろん赤い旗や赤いスカーフは、共産党でも労働者党でもなくて、一人ひとりの上に降りてきた、「舌のような炎のような精霊」をあらわしているのだ。

使徒言行録2-4に描かれたことが日本で起きたら、神社は語学学習成就のお守りや絵馬をきっと作るだろう。

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