2016年8月11日

ブラジルでカーナビを使うときの注意

リオ五輪、警備の精鋭警官3人撃たれる スラム街に誤進入
http://rio.headlines.yahoo.co.jp/rio/hl?a=20160811-00000028-jij_afp-spo
こんなニュースがあったので日本でもその奇妙な危険さが知られるようになったと思う。

道を誤ってファヴェラ(スラム街)に入り込んでしまった治安部隊の隊員3人は、それぞれアクレ州、ピアウイ州、ロライマ州、つまりブラジルの辺境州からはるばるリオ・オリンピックの警備のために動員されていた。
車両一台に乗って移動中だったのだが、どこからどこへ向かっていて、どのような経過で道を誤るに至ったかは明らかになっていない。
ただ、どのあたりかは報道された。

リオ・デ・ジャネイロ市の国際空港のある東北部と南部バーハ地区を結ぶ自動車道路、黄線 Linha Amarela が、市北部と南部コパカナーバ地区を結ぶ赤線 Linha Vermelha に接続するジャンクション部は、北側をコンプレクソ・ダ・マレ Complexo da Maré、南側をヴィラ・ド・ジョアン Vila do João という二つのファヴェラに挟まれている。
ジャンクションの手前にはいくつか細かい出入り口があるので、どこかで間違って出てから本線に戻ろうとして迷ってしまったのであろう。
民間の普通の車だったらとりわけ問題はなかっただろうが、たまたま目の敵の警察車両をただ一台だけ入ってくるのを見咎めた組織の者が攻撃を仕掛けたということだったと思われる。

しかし、道を間違えてファヴェラに迷い込んでしまい、犯罪組織の者に勘違いされて銃撃されるという事故はこれが初めてではない。
ブラジルではGPSと呼ばれることが多いが、カーナビを使うときに注意しておきたい点がある。

まず、完全に設定を誤ってしまうケースである。

ブラジルには通りに名前がついていて、それが住所や住居表示となっているのだが、どこの市にもあるような普遍的な名称がある。
たとえば、Avenida Getúlio Vargas ジェトゥリオ・ヴァルガス大通といった、歴代のブラジルの大統領の名前から取った地名である。
隣町が何十キロも離れているようなところでは起きる心配はないが、いくつかの行政市の市街地が連続している大都市圏では、よく確認して目的地設定をしないと、同じジェトゥリオ・ヴァルガス大通であっても隣の市のジェトゥリオ・ヴァルガス大通を目指していくことになってしまうので注意が必要である。

もう一つの注意はもっと危なくて、しかも必ずしも避けられるものではないので、より深刻である。

たびたび書いていることであるが、ブラジルの大都市には、ファヴェラと普通や高級な住宅街が隣接しているところがかなりある。
そうすると、出発地と目的地の位置関係で通り道がファヴェラの真ん中を突っ切るようなことが時に起きる。
ブラジルでカーナビを使ったことはないので、「危険な地区を通るルートを避ける」というような設定オプションがあるかどうかはわからない。
多分ないと思う。
そもそも誰が「この地区は危険と指定する」職権を持つのか。
警察にはその職務遂行上、この地区は危険なのでパトカー二台以上でなければ入ってはいけない、というような地域に関する注意事項が徹底していると思われるが、このような情報は公開されることはないだろう。

親戚の若い者が昔、リオデジャネイロマラソンか何かのスポーツ行事に参加するために仲間と、ヴァンとよばれる15人乗りくらいの車を借りてリオまで出かけて行った。
カーナビを使っていたか、昔ながらの紙の地図を使っていたかはわからないが、近道をしようとして、よそ者ゆえに上に書いたように気づく間もなくファヴェラに入り込んでしまった。

週末の朝だったので、中に入っていくほどに、薬物で半ばフラフラになりかけた組織の見張り役のような連中が銃を突き付けて誰何してくる。
そもそも隠すことは何もないのだから、事情を説明をして先を急ごうということになり、「おれたちは(自分たちを指して)この格好を見たらわかると思うが、今日(ファヴェラの向こう側を指さして)あっちのほうで開かれるマラソン大会に参加するためにミナス・ジェライスからはるばるやってきたのだが、道に迷って遅れそうになっているのでここを通してくれたらありがたい」というようなことをわざとミナス訛りを強調して口々に訴えた。
事情を理解してもらって通してもらえたので無事マラソンにも間に合って助かった、とかなり貴重な体験を語ってくれたことがあった。

ブラジルの大都市でカーナビを使い未知の場所に行くときは、面倒でもその都市の危険地図を前もって地理勉強しておいたほうがよさそうである。

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