2018年10月8日

楽しく驚くブラジル総選挙

2018年10月7日はブラジル総選挙投票日である。
4年毎に共和国大統領、共和国上・下院議員、州知事、州議会議員を投票する。
少し詳しく言うと、そのうち定員各州3名の上院議員だけが、他の職の2倍の任期8年のため、2018年は総数の三分の二が改選されるが、前回と次回つまり2014年と2022年の総選挙では三分の一が改選の対象となる。

大統領と州知事のみ、有効票の過半数を得た候補者が出ない場合に、上位2人による決選投票が3週間後に行われることになる。

ちなみに2年後には、市長と市議会議員(いずれも任期4年)の地方総選挙が行われる。
要するに、ブラジルでは偶数年の10月に何らかの選挙がある。

ブラジルの選挙では、統計的なサンプルによる投票意向調査が頻繁に行われて、結果は公表される。
長い軍政時代はともかく、昔は起き得なかったことだと思うが、世論調査がプロフェッショナル企業化していて、主に新聞社やテレビ局のようなマスコミが発注主となり、選挙裁判所の許可を受ければ気軽に行えるようになったため、明文化されていないものの事実上選挙システムと一体化している。
テレビのニュースでは通常、地方版では州知事と州選出上院議員の、全国版では大統領の調査結果が発表されるので、特に投票日直前の結果を参考にして投票行動を決定することができ、どうするのが一番効果的であるか作戦を練るのが楽しい。

特に一発勝負でなく上位2名の決選投票があり得る、投票意向調査が広く発表される大統領と州知事については、意中の候補者が思ったより伸びず、投票が死に票になりそうな場合に、次善の候補者を少なくとも決選投票まで残すために、あるいは死んでも入れたくないという拒否候補を3位以下に落とすために、一番好きなではない候補者に戦略的投票をすることができる。
このように考える有権者が多いために、前日までの投票意向調査と全く異なる開票結果が出てびっくりすることが多く面白い。

今日の大統領選挙については、意向調査と開票結果で順位こそ変わらなかったものの、3位候補者の実際得票率は意向調査とほぼ同じだったのであるが、決選投票に残ることになった上位2位の候補者の得票率は、それ以下、特に4位候補者の票をかなり奪って意向調査結果より共に増加するという開票結果となった。

わが州知事の一次投票結果は、新党新人の意向調査3位候補者が調査終了後に急進して開票結果1位に躍進、意向調査1位候補者は順位を一つ落として両者の決選投票となり、意向調査第2位であった再選を狙う現職州知事の候補を決定的に追い落とすことに成功した。

有名人で言えば、リオデジャネイロ州知事候補で意向調査2位につけていたのは、1994年のワールドカップでブラジル優勝の原動力となったロマリオ現上院議員であったが、土壇場の有権者投票行動の激動によって実際4位まで転落して、決選投票に残ることができなかった。

今日までの結果を見て気づくのは、不正な政治献金で逮捕者・服役者を出した既成政党の衰えである。

ミナス・ジェライス州の州知事選で、調査結果2位の労働者党(PT)の現職州知事は、新党新人の3位候補者が調査終了後に急進して、決選投票から追い出された。

同州の上院議員選では、2016年に罷免された労働者党(PT)のジルマDilma前大統領が、PT内ではクリーンであり、知名度は抜群に高いため、調査結果では1位で上院議員当選が確実かと思われていたものの、調査結果発表を見たアンチPTが発奮したようで、結局4位に落ち上院議員の座を逃した。

このようなことが他の州でも起こっていて、特に割りを食ったのは現職大統領及び前・元大統領が所属するMDBとPT及び最大野党PSDBの3つの、献金漬けでこれまでいい思いをしてきた既成大政党であったのは小気味よい驚きである。

普段見ることのないよその州の選挙結果を見ると、懐かしい人が出てくる。
今回新たな驚きは、1996年と2002年のオリンピック女子バレーボールで銅メダルを獲得したブラジルチームの愛くるしい人気者レイラが、連邦区の上院議員に選出されたことである。
連邦区で初めての女性上院議員であるという。
選挙候補者登録名が「バレーのレイラ」Leila do Vôleiであるのが得点源だったのだろう。

最後に付け加えるが、ブラジルにとって外国である欧米先進国のマスコミが糞であることである。

大統領選一次投票で有効票の46%を獲得した小党PSLの現職下院議員、退役軍人で選挙運動中に刺傷事件の被害に遭ったジャイル・ボルソナロ(あるいはボウソナロ)Jair Bolsonaro候補者は、女性・人種・LGBT差別者で、思想は極右であり、軍政を礼賛する民主主義の破壊者であるからブラジルの将来が不安であるという論調である。
彼と決選投票を戦うことになった、有効票の29%を獲得した2位候補者、フェルナンド・アダジFernando Haddad候補者の所属政党PTは、不正政治献金事件で最も逮捕者を出しているのだが、もし彼が大統領になったとしたら、ルラ元大統領を含むPTの面々を有罪判決して、元大統領自身の署名によって発効した法律に忠実に従って元大統領の立候補を棄却した、大統領制立憲独立国家ブラジルの司法権を無視して、手放しで民主主義の勝利であると、海外マスコミは礼賛するのだろうか。

どこの国でもマスコミは人権擁護に熱心であり、それはマスコミに求められる資質であるが、社会主義国の人権と資本主義国の人権に差をつけるような、ダブルスタンダードを持つマスコミは信用できず、ブラジルはこういうのは全く無視して良いと思う。

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