2021年2月9日

行きは寝台、帰りは椅子が理想な旅行

アマゾナス州の州都マナウスから、18人のCovid-19中・重症者が、ブラジル空軍輸送機でミナス・ジェライス州西部の町ウベラバへ搬送された。
3週間前のローカルニュースである。
2名の医師、数名の看護師も同行した。

Google Mapsで計測する、ウベラバ-マナウス間の直線距離は2,270キロである。
ニュースでは3千キロと大雑把に言っていたが、いささか大げさではないか。
と思ったのだが、経路検索をしたら、自動車で陸路移動するとなると3,570キロもある。
鉄道というオプションはない。

2021年2月5日の報道によると、アマゾナス州から全国16州へ、合計503人の患者が搬送されたそうだ。

北地方(3)-アクレ AC、パラ PA(この2州はいちおうアマゾナス州の隣)、トカンチンス TO
北東地方(6)-マラニョン MA、ピアウイ PI、リオ・グランデ・ド・ノルテ RN、パライバ PB、ペルナンブコ PE、アラゴアス AL
南東地方(3)-ミナス・ジェライス MG、エスピリト・サント ES、リオ・デ・ジャネイロ RJ
南地方(3)-パラナ PR、サンタ・カタリナ SC、リオ・グランデ・ド・スル RS
中西地方(1)-連邦区 DF

患者受入地はブラジルの全地方に広がっているが、距離はどうか。
以下距離は州都同士の直線距離で比較をする。
患者輸送は全部空路なので適当であろう。

まず近そうな隣接州をみてみる。
マナウス-リオ・ブランコ AC 1,150キロ
マナウス-ベレン PA 1,280キロ
隣接州と言っても、千キロ以上ある。

北東地方だったらどうか。
マナウス-ジョアン・ペッソア PB 2,860キロ
ブラジル最東端の州都である。

南東地方
マナウス-リオ・デ・ジャネイロ RJ 2,850キロ

一番遠そうな南地方
マナウス-ポルト・アレグレ RS 3,140キロ

さて、ポルトガルも大変なことになっていて、ドイツから医療団を送ったり、オーストリアが患者を受け入れると表明した。
リスボン-ウィーン 2,300キロ
なかなか遠い。
でもこれは3つか4つ向こうにある、遠い別の国である。

第1波のときには、北イタリアからドイツへ患者空輸が行われた。
ミラノ-ミュンヘン 350キロ
イタリアとドイツは国境を接していないが、これまでの例と比べるととても近い。

マナウスの医療資源不足のため空輸された患者たちは、見知らぬ土地の病院でどうなったか。
2月5日報道によると、503名中153名が退院してマナウスへ帰還した。
37名は治療の甲斐なく死亡した。
残りは入院治療中である。

ウベラバの町へ着いた18名の行方は、6名退院帰還、5名入院治療中、7名死亡ということだ。

アマゾナス州都マナウスは、人口約220万人の、ブラジル第7番目の大都市であるが、ブラジルの都市集中部からは、大地と大河に阻まれる隔絶地である。
空輸された患者たちの中には、これが人生最初の州外への旅行である人も少なくないと思われる。
アマゾン川を直線距離で600キロ下れば、隣州パラの大都市サンタレンだから、きっと船で州外旅行をしたことはあるという人もいるだろう。
今調べたら、川下り30時間、川上り42時間かかるそうだ。

退院となって病院から空港へ運ばれ、帰りの便まで一切自由時間がない、一風変わった初めての州外旅行であっても、生きて帰るものは幸いである。
帰り便も横になって、しかし棺の中なんていうのは辛い。

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