2016年5月14日

ブラックバードの仲間たち

以前ブラックバードについては疑問があって、それは一応解決したものと思っていたのだが、新たな疑問が急に湧いてきた。

愛鳥週間あるいはバードウィークを記念して、
OTTAVA(オッターヴァ)
では、最近鳥にまつわる曲が非常に多くかかっていた。
クラシック音楽には鳥が取り上げられる曲が結構たくさんある。

民族音楽と自然とクロスする領域のプレゼンター、ゲレン大嶋さんの日に、曲目twitterで、次の流れを見つけた。

  • #ottava Now on air:ヴィラ=ロボス:黒鳥の歌
  • #ottava Now on air:ペルナンブーコ:黒鳥

ここで非常に考え込んでしまった。
ゲレンさんは両方とも、「コクチョウ」と発音された。
ヴィラ=ロボスの曲の黒鳥と、ペルナンブーコの曲の黒鳥は、はたして同じ種類の鳥なのか?
ビートルズのブラックバードと、バイバイブラックバードが同一かどうか問題の、第二弾である。

Heitor Villa-Lobos - O Canto do Cisne Negro
ヴィラ=ロボスの曲のポルトガル語の曲名は、"O canto do cisne negro"である。
シスネはハクチョウつまりスワンだから、シスネ・ネグロはブラック・スワン、コクチョウである。
ブラジルの先住民が黒鳥を見る機会などなかっただろうから、ブラジル民謡由来ではないと思うが、ヴィラ=ロボスがどこかで黒鳥を見たのか、あるいは「白鳥の湖」か何か他の作品から引用したのかどうかはわからない。

全身が真っ黒で赤いくちばしを持つ、白鳥と同じ形と大きさの水鳥である。
ふつうは動物園や公園でしか見られないものだろう。
カモ目カモ科ハクチョウ属のオーストラリアの固有種であるという。
ハクチョウ属ということは、同属の白鳥との間に種間雑種が生まれると思うのだが、そうすると当然、「灰鳥」となるのだろうが、両種の自然の生息地に全く接点がないからか、灰鳥というものを聞いたことがない。

João Pernambuco - Graúna
ブラジルの独特な音楽ジャンル、ショーロであるペルナンブーコの曲名にシスネはない。
そのかわりに見つかった曲名が、"Graúna"である。

グラウナはブラジルの先住民の言語の一つトゥピ語で、文字通り「黒い鳥」という意味と書いてある。
学名は"Gnorimopsar chopi"、おっこれは先の本ブログ記事の、ブラジルのブラックバード、ポルトガル語ならばパサロ・プレト(pássaro-preto)と呼ばれる鳥のことでないか。
和名は「ミゾハシクロムクドリモドキ」多分「溝嘴黒椋鳥擬」という漢字を当てるのであろう。
ムクドリモドキという名前を持つところから、大きさはムクドリくらいで、オーストラリアの黒鳥よりはだいぶ小さい。
湖上を泳ぐこともない。

19世紀から20世紀にかけての同時代に活躍したブラジルの二人の作曲家が別々に作った、漢字では「黒鳥」の曲であっても、実は異なる種類の鳥を指していたのだった。

知っている人だったら当然なのかもしれないが、これは新鮮な驚きだった。
ブラックバードは実に奥が深いというか、なかなか複雑なのである。

ブラックバード、あるいは黒鳥(くろどり)の仲間たち

カラスとか九官鳥なんかも黒いぞ、という声があるだろうが、この仲間たちは音楽関係から派生したということで、「かーらーすー、なぜ鳴くのー」とかもあるのだが、今回はこれだけに限っておこう。
原語名和名学名関連曲
Common blackbird
(代表して英)
クロウタドリ
黒歌鳥
Turdus merulaブラックバード
(ビートルズ)
New world blackbird
(代表して米)
ムクドリモドキ
椋鳥擬
多数の属バイバイブラックバード
Pássaro-preto
Graúna(伯)
ミゾハシクロムクドリモドキ
溝嘴黒椋鳥擬
Gnorimopsar chopi黒鳥
(ペルナンブーコ)
Black swan
(豪)
コクチョウ
黒鳥
Cygnus atratus黒鳥の歌
(ヴィラ=ロボス)

Common blackbird - ブラックバード


New world blackbird - バイバイブラックバード

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