2018年11月20日

キューバ人医師に救いの手

昨日の本ブログ記事のキューバ人医師の数について次の考察をしたのだった。
当ブログの前記事「ブラジルで医師になるための最後の難関」のデータを大まかな仮定に基づいて概算すると、「もっと医者を」プログラムに参加する8332名のキューバ人医師のうち13%に当たる1095名のキューバ人医師が、「もっと医者を」プログラムの契約解除を承知で、またはできるかどうか知らないが隠れて、医師資格の法的有効化試験の受験に挑戦して、そのうちの140名が二次試験まで進んだ勘定になる。
試験に通った僅かな者はブラジルで勤務や開業をできるから万歳であるが、大部分の落ちた者はアルバイトをしながら次回の試験を待つのだろうか。

この計算をした後で見た11月19日の晩のニュースで、連邦政府は「もっと医者を」プログラムの募集要項を発表した。
要項は明日11月20日付けで公開される。

保健省は火曜日(20日)に「もっと医者を」の8,500ポストの募集を公開する
Ministério da Saúde vai publicar nesta terça (20) edital com 8.500 vagas para o Mais Médicos

2,824自治体(ムニシピオ)と34先住民居住区の計8,517ポスト募集、報酬は11,800レアルである。
そして契約期間は3年で、3年の再契約があり得る。
一次募集はブラジル人および外国人で、ブラジルの医学部を卒業して医学審議会の登録済、つまりブラジルの正式資格の医師が対象である。
自治体ごとのポスト数を発表して、自治体単位で先着優先とする。

一次募集で補充できなかったポストには二次募集を行う。
この段階でようやく、ブラジル人および外国人で、ブラジル以外の国で医師の資格を取ったが、ブラジルの法的有効化試験を通っていない医師が応募できる。

一次募集を通った医師は、来月7日からポストで勤務することが求められる。
二次募集は様々な書類の審査があるので、完了まで多少時間がかかる予定である。
ボルソナロ次期ブラジル大統領が表明したように、ブラジル医師資格を持たないキューバ人医師は(キューバ人だけでなくどの国籍でも同じだが)、即座に法的有効化試験合格を求められることはないが、医師として働くためには二次募集に応募するしか道はない。

外国で資格を取った医師は1万7千人ほどいるとみられ、現在法的有効化試験の結果待ちや、残念ながら落ちてしまったキューバ人医師はもちろん、現行「もっと医者を」プログラムの契約解消に伴って12月までの帰国指示を受けたその他のキューバ人も、かなりこの二次募集に期待することになるのではないか。

キューバ政府の帰国命令に従う医師の帰りの運賃は、キューバ政府の一方的契約破棄であるため、ブラジル政府は一切負担する予定はないと、ブラジル側は発表した。

ざっと分析してみると、今回の二次募集は現行「もっと医者を」プログラムと要件も待遇もほぼ同じであり、単に次期大統領の気に入らないキューバ政府の関与(派遣医師からピンはねして左翼政権の国庫に入れる)を外すためだけにわざわざ行ったと勘ぐることができる。
キューバ政府にとっては外国に医師を派遣する事業は大きな外貨獲得源であるが、その原動力であるキューバ人医師の切り崩しを狙い、希望者には亡命してブラジルで医療で働く道を与え、帰国希望者にはキューバ政府のお金で帰国してもらうという形になっており、次期ボルソナロ政権はうまく立ち回ったのではないか。

二次募集に成功したならの条件がつくが、キューバ人医師はとりあえず医師資格の法的有効化試験の準備時間を稼げた格好で、本国帰還を放棄するものがどれだけ出るのか、なかなか興味が湧く。

0 件のコメント:

コメントを投稿