2019年4月8日

水星に突然の邂逅

2018年12月の南半球の夏至のころ、次のように書いた。

水星は、わざわざ「観察するぞ」と意気込んで、しかも一年の中でどの時期のどの時刻にどの方向を探すべきか、あらかじめ調べておかないとなかなか見ることができない。

たしかにその通りなのだ。
2018年12月には、水星は西方最大離角にあって、暁の東の空に見えた。
見通しの良い場所を求めて、1キロ位歩いて公園に行った。
実は家の前の通りに出るだけで、屋根の低い場所を東方に探せば見つけることはできた。

2019年2月19日には、わが家の西側の通りに面した高い塀にはしごを掛けて、塀の上に顔を出し、日没後間もない19時から19時15分ころまで、西の空に東方最大離角を迎えようとしていた水星を見つけた。

いずれにせよウォーキングをしたり、塀まで登り、双眼鏡を使うという、コストと言うか手間を掛けなければ見つけられない高度と明るさだった。

しかし、偶然に出会うということもあるのだ。

2019年4月7日朝5時45分のことだった。
家のダイニングからは東の空が見える。
その方角には通りと反対側の隣家の塀がある。
データに示すとおり、少しずつ明るくなっていく直前の、暁の夜空だった。
塀のかなり上に金星が見えた。
そのすぐ下に、明るさが及ばないため、金星よりは小さいが、この暁の東の空の明るさに負けない光点がある。
手持ちの双眼鏡の視野にぎりぎり入ったから、距離角度は6.3ºである。
こんなところにこんなに強い光を放つ星があるとは、もしや水星ではないかと、スマホのSky Mapを作動させた。
やはり水星だった。
事象EnglishPortuguês時刻
天文薄明Astronomical twilightCrepúsculo
astronômico
5:08
航海薄明Naval twilight
(Nautical twilight)
Crepúsculo
náutico
5:33
観察開始5:45
市民薄明Civil twilightCrepúsculo civil5:59
日の出SunriseAmanhecer6:21
肉眼で目視できたのは最初の瞬間だけで、早速取ってきた双眼鏡で2分ほど観察できたものの、地平線側に湧き起こってきた雲に隠されてすぐに見えなくなってしまった。
いや、儚い邂逅であったものよ。

後から日本の天文サイト、アストロアーツを見たら、2019年4月12日 水星が西方最大離角ということである。
しかし、記事によると、東京での日の出45分前の水星の高度は約3度というから、よほど東方に何もない開けた場所でないと見えないのではないか。

疑問を解くために、以前も参照したさいたま☆天文同好会の内山茂男氏による、水星の最大離角をみる。

西方最大離角のときの日出時高度というグラフを見ると、4月初旬のころ、パースや赤道の南半球側では高度が一年中で最も高く25度位、反対に北半球の埼玉では12度位と、水星の見やすさは大違いである。

たしかに東側の塀の高さは、手を伸ばした握りこぶし2つ分くらいなので、山上企画天文情報いろいろの手の分度器~身体を使った角度の測り方を参考にすると、約20度とみる。
それより少し高いところに見えるのだから、水星の高度は二十数度だろう。

星見アプリを使ったり、天文サイトを参照する前に水星を見つけることができたのは、これまでに何回かこの惑星を探して観察していた経験があったからだと思うが、旅行中これまで行ったことのない町で、旧知の人に出会ったような驚きを感じるものだ。

家から一歩も出ずに窓越しに、高度が低く観察条件が限られている水星が見えるとは、全く予期していなかった。

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