2019年5月19日

パチネッチで走ろっち

ポルトガル語で「パチネッチ(patinete)」という玩具とも乗り物とも言えるものがある。
さてこれは日本語で何と言うのだろうか?
この物の名前を日本語で呼んだことも、これについて日本語で書かれた文を読んだこともないのに気づいた。

ようやく調べたら、英語でscooterとか、kick scooterと言われるらしい。
scooterには動力付きと動力無しがあるようだ。
日本語では少し複雑で、キックスクーターは英語から直接の導入語で、キックスケーターは和製英語、キックボードは商品名とか、ややこしい。

「現代ポルトガル語辞典」白水社(1996)では、見出し語patineteは、
男性名詞 [子供用の、片足で地面を蹴って進む]スクーター
とある。
しかし、ニュースで解説していたが、
サンパウロでは、o patinete(男性名詞)
ベロ・オリゾンテでは、a patinete(女性名詞)
と異なるそうで、これも方言の一種だろう。
Wikipediaポルトガル語版には、o patineteと書いてある。
そして、聞いたことはなかったが、ポルトガルのポルトガル語ではtrotinetaと呼ぶのだそうだ。
日本語の呼び方のようにややこしい。

さてこれがサンパウロのようなブラジルの大都市内の、手軽な交通手段になっているとニュースに取り上げられた。
企業が多数購入して、契約ユーザーがシェアリングできるスマートフォンのアプリと共に提供するのだが、ユーザー自身が購入したり持ち運ぶ必要がないことから、最近9ヶ月足らずの新しいものであるのに、爆発的に広がっているという。
自分で蹴って漕ぐタイプではなく、充電式のモーター付きであるから、スピードはそこそこ速く、しかも疲れない。

このような子供が遊びに使っている、半分はおもちゃにみえるのだが結構スピードが出る物が、町中にはびこるとどういうことになるか。
歩行者との接触事故や、転倒事故が増える。
歩道へ乗り上げるところやマンホール設置の段差では、注意散漫でスピードを出していると、車輪径が小さいだけに乗り越えられなくて、すぐに転倒する自損事故が起きる。

なにぶん新しいものだから、法制が追いついていかない。
国の交通局(Departamento Nacional de Trânsito)は、歩道を走行するときは時速6キロ、自転車レーンを通行するときは時速20キロと定めている。

最近サンパウロ市は独自に市法を作り、ヘルメット着用を義務づけ、歩道上の通行を禁止して、自転車レーンと普通車の最高時速が40キロである道路の通行を認め、最高速度を時速20キロと定めた。
サンパウロでは全ブラジルに先駆けて、パチネッチを歩道から締め出し、車道へ追いやったのである。

なおブラジルで動力付きのこれを、公道で運転するのに免許は不要である。

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