2021年5月23日

がっかり日本、予防接種

 新型コロナ感染症(COVID-19)の予防接種について、日本とブラジルのそれぞれの進捗に注目しているのだが、日本の予防接種が遅々として進まないのは全く驚異である。
オリンピック東京大会が開催されると大勢の外国人が訪日するから、日本政府は当然大会前に日本国民の大半に2回接種を済ますようなスケジュールを立てて、予防接種をてきぱきと手際よく進めるだろうと、確信に近い予想をしていたのであるが、全く裏切られてしまった。

ブラジルで少なくとも1回接種済みとなった人の、総人口に対する割合は、昨日の時点で約20%、2回の接種が完了した人は、総人口の約10%となっている。
日本は少なくとも1回の接種済みの人が、5%前後に留まっているという。
いまブラジルで1日約70万人に接種、調子のいい日には100万人に達するのだが、きょうのオリンピック関連のニュースで、日本の1日接種人数は約8万人と言っていた。
ブラジルの九分の一である。
両国の人口を考慮して単位人口あたりにしても、九分の二である。
日本のように組織がしっかりしているはずの国で、なぜそんな残念な結果になるのだろうか。

ポータルサイトを見ると、日本では郵便で接種券が送れられてきてから、電話、インターネットサイト、あるいは市役所で対面で予約をするという形になっているようである。

電話は通話殺到のためずっと話し中、インターネットはやり方がよくわからない、そういった人がみな集まって密になるから対面対応は取りやめにするとか、なかなかうまく機能していない。

日本は何かと郵便で通知することが多いようである。
もちろんブラジルでも裁判所とか税務署などの通知は、受け取り証明付きの郵便で行われるが、最近はインターネットを使うことが多くなってきている。
特に情報のやり取りが迅速であることが必要な、今回の非常事態のような場合には、郵便は遅すぎる。

ブラジルの2020年の緊急援助金の支給のために、連邦政府はどういうやり方をしたか。
これまで自行他行に銀行口座が有る無しに関わらず、連邦貯蓄銀行は一律に各受取人名義のデジタル口座を開き振り込み、出金つまり支払い・振り込みと現金引き出しの操作を行えるのは、スマホのアプリのみとする単純な方法をとった。
現金引き出しに必要なコードをアプリで生成して、ATMや宝くじ売場で引き出すようになっているらしい。
一律に新規に口座を作るのだから、いろいろな個別的なチェックなど一切必要なく、迅速に行う目的にはかなっていた。

しかし受取人の便利などは全く考えていない。
アクセスが集中すると、何時間も何日も根気が必要な時期があった。
スマホがない人やガラケーの人は買え、買えなかったら家族や知人から借りろ、操作がわからなかったらデジタルに詳しい子供に手伝ってもらえ、といった突き放した冷たい対応で、どうにもならなかった人たちは、行くなと言われても構わず、銀行支店に密な大行列を作っていた。

今回の予防接種もわが市の場合、最初に市役所のインターネットサイトで登録しなければならず、そのときにパソコンかスマホが必須である。
ワクチンの供給が極めて不定期なため、私達の場合には接種日時場所を受け取ったのは接種日前日の午後であって、日時にしても場所にしても、こちらの希望など全く聞いてくれない。
「xx月xx日(明日)のxx時xx分にどこそこに指定」という強制的呼び出しの通知が送られるのは、携帯電話のショートメッセージサービスであるから、ガラケーでも受け取ることができる。
理屈ではもちろん、パソコンも携帯も持っていないという人でも、毎日ランハウス(LAN house)つまりインターネットカフェ様の施設へ行って、料金を払って市役所のサイトにアクセスして、自分の順番が来ているかチェックすることはできるが、これはめんどくさい。

基礎疾患を持つ人の区分ではさらにハードルが上がる。
市役所サイトから診断書定形フォームをダウンロードして印刷、普段かかっている医師に診察して記入してもらってから、その写真を撮って登録時にアップロードを行う。
市役所はその画像で可否判定を行う。
接種可となった人は接種指定日に原本を持参して、会場の受付でシステム内の画像と照合するだけにしておく。

日本政府は、高齢者はスマホが使えないとか持っていないとか、至れり尽くせりの気配りをしているのだが、もっと突っ放しても構わないのではないか。
日本はヨーロッパやアメリカ大陸諸国と比べてコロナ流行が抑えられているから、普通の年だったのならば、ゆっくり予防接種しても構わなかっただろう。
しかしオリンピック大会に間に合わせるためには、もう2ヶ月しかなく、予防接種はスピードが命である。
残った僅かな時間にスケジュール遅れを一気に挽回するためには、どうしたら良いだろうか。

  • 連絡は郵便ではなく、画像のやり取りも含めてインターネット(携帯電話、パソコン、タブレット等)で行う
  • そのために居住市町村で携帯番号と電子メールアドレスを登録させて、住民登録のある市町村で接種する
  • ワクチン輸送や保管を容易に、無駄を減少するため、市町村で体育館やスタジアムのような少数の大規模接種会場を用意
  • 接種日時や場所は住民が予約するのでなく、例えば高齢者を優先して接種する場合には、生年月日が早い住民から、順番を機械的に割り振る
  • 場所も同一市町村内なら遠近に関わらず割り振り、住民に選択などさせない
  • 密な行列ができないように指定時刻を細かく区切って設定する
  • 指定日時場所に行けない場合や遅刻などは、個別に対応するのではなく、何日か後に後回しにする
  • 企業に対して、従業員が予防接種のため指定日に半日あるいは全日欠勤をすることを認め、これを有給とするよう法令で保証する(ブラジルではそこまではしていない)

こうしてみると、ブラジルの私が住む市の予防接種の段取りは悪くない。
ただしわが市はうまくやっているが、住民を行列させて密状態を作ってしまう、段取りが悪い市も少なくない。
単純機能のアプリを手早く作って、機械的に人々をさばいて、速い流れにのせることができた都市が、うまくできていると言って良さそうである。
日本では住民の知恵と努力にもっと寄りかかっても良いから、とにかく速くできる方法を取ることだ。
個人個人の都合など慮る必要など一切ない。

マイナンバーが言われだしてから、もう十年近く経ったのではないか。
息子が日本に留学した2015年に、マイナンバーカードを作成してきた。
それから6年経つのに、どうしてこれが未だに普及して使用されていないのか全く不思議である。
米国とかブラジルでは、いわゆる納税者番号が遠い昔から使用されていて、予防接種の接種希望者登録のようないろいろな場面で、個人識別番号として役立っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿