2021年6月9日

五輪やるなら壁作れ

前合衆国大統領トランプ氏は壁に固執していたが、今の日本政府が何を犠牲にしてもオリンピック大会を開きたいと固執するなら、強固な壁方式を採用すると良いのではないか。

大会を安全に開くために、関係者と外部の人的接触を遮断する「バブル」という考え方があるが、競技別大会クラスの規模ではうまくいっても、数万人が来日する世界最大規模のイベントであるオリンピックでも同様にうまくいくとは思わない。

出場選手に予防接種を行うという対策も、利点と欠点がある。
ブラジルの予防接種会場でのインタビューを聞くと、「これからも慢心しないでマスク使用や距離確保を続ける」という人よりも、「神様に感謝します、これで安心して以前のような生活ができる」と喜ぶ人が多い。

母国に留まっていたら来年になるまで、とても予防接種の順番が回ってきそうもない途上国の健康な選手が、ぎりぎりで出場権を手にしたような場合には、接種を受けられるだけで儲けもの、これでコロナ防御は鬼に金棒、マスクも要らないよと、予選落ちしても構わんが昼と夜の観光は欠かせぬと、自由時間の旅行の予定に気もそぞろ、といった危険な人続出となりそうな気がする。
選手に予防接種を行うことによって起きうる、感染拡大の危険である。

どれだけ日本に住む人がオリンピックなんて反対だと言っても、日本政府の立場としては国民の意見を無視してまで、どうしてもやり遂げなければならないというのなら、方法がないわけではない。

まず首都圏の緊急事態宣言は、会期中も徹底継続することだ。
その上で対策を執行しやすくするために、オリンピック大会緊急事態対策法を緊急立法する。
欧州の国々のロックダウンや中国の人民操縦に倣って、警察と自衛隊に武器使用まで含んだ強権を与える。

選手、スタッフ、報道などすべて外国から日本へ検疫免除で入国する者は、14日の検疫を免除するのではなく、オリンピック大会自体を検疫とするのである。
検疫であるからには、決められた場所つまり競技場と宿舎とオリンピック関係者専用車両以外の場所へ行くことは禁止である。

競技場や宿舎から逃げ出すことのないように、警察官、足りなければ自衛隊員をそれらの場所の周りに配置する。
本当はブラジルで、危険がないと判断され釈放されている受刑者や被疑者の行動を、遠隔監視するトルノゼレイラ(tornozeleira eletrônica)と呼ばれる機器をくるぶしに装着するのが確実だが、そんなものは日本にないし、さすがに人権問題になるだろうから無理だ。
簡単に言えば、今回の大会警備は大衆が悪さしないように警戒するのでなく、関係者が隔離を破ることがないように、閉じ込めておくために見張るのである。
これで日本の一般住人とオリンピック来日者の接触を最小限に抑え、バブル方式が成功する。

バブル方式ができなくても、より現実的な別の方法がある。
壁方式である。

感染拡大危険因子である来日者と接触が考えられる、すべての日本人を壁にする。
一番近いところでは大会の進行に携わる関係者である。
衣食住に関わる人や交通を担当する人、公安従事者である。
だからボランティアに予防接種を行うのは当然なことだ。
そうするとどこまでを壁とするかが問題になる。

最近の記事で日本の1日の接種数が百万に達したと読んだ。
やればできるではないか。
地方の予防接種は一旦中止して、関東地方の、あるいは首都圏全体の、それが無理なら一都三県と開催県の住民に、集中して予防接種する。
老若男女関わらず成年対象である。
1日百万なら、10日で1千万接種ができる。
今すぐ始めれば2回め接種プラス2週間がぎりぎりで間に合って、強固な壁で来日者を包囲することができるだろう。
この「予防接種人の壁」方法の利点は、経済を止めなくてよいから、関連業界が期待する経済効果が見込めることだ。

それだけ注意しても、陽性者が出てくるだろう。
陽性になったら即座に競技は失格、陽性者をすぐに飛行機に乗せて本国へ送り返すわけにもいかないから、隔離地の中でさらに隔離された区画で、陰性になるまで治療に専念してもらい、治れば速やかに帰国してもらう。

本当はIOCが客船を借り切り、公海に停泊して隔離病院船として、陽性者は日本出国してからそこへ送るのが良いだろう。
公海ならば、医師その他の医療従事者の国籍を問題にする必要もないから、外国のボランティアだろうがなんだろうが、IOCが好きに連れてきてもらえば良い。
そうすれば逼迫している日本の医療に負担をかけることはない。

来日者も今大会は特別であり、緊急事態の東京でオリンピック大会を安全に開くための方策であることを理解して、好き勝手に歩き回ることはあきらめて、日本政府による公共衛生のための措置に絶対服従すると、宣誓書に署名しなければ入国できない。

まずは臨時立法と、首都圏最優先予防接種のための日本国民の説得である。
経済上昇と接種実績急進をオリンピック開催の利点として強調して、地方へは後で埋め合わせをしっかり行うと目標を定めて、首相その他が真摯な態度で国民に説明すれば、オリンピック開催への見方が劇的に変わって、歓迎される東京大会となるだろう。

日本政府に安全、安心な大会開催を行う気概があるのなら、これをやってみろ。

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