Laboratório de Oceanografia Costeira e Estuarina da Universidade Federal do Rio Grande (FURG)
リオ・グランデ連邦大学沿岸河口海洋学研究室
グアイバ湖の水はパトス湖に達して、被災地に再び洪水の恐れが増す
Águas do Guaíba chegam à Lagoa dos Patos e aumentam chance de novas enchentes em região já destruída
Por Jornal Nacional
23/05/2024
という記事に、洪水水の大西洋への排水について説明がある。
まず当地のことを知ろう。
Google Mapsを使い、地図と航空写真で現地の様子を見る。
パトス湖の大西洋への開口部はのっぺりしているのではなく、煙突を横に倒したような形状の、細長い水路を形作るように、2本の突堤が海岸線とほぼ直角に、大洋の方角に伸びている。
測ってみると、その水路の長さは約3.5km、水路の先端が外洋に接する部分の幅が580mという大きな建造物である。
それ自体はコンクリートではなく、写真からうかがえる限り、1~3メートルくらいの形の不定形な巨石を積んである。
テトラポットと比べて、不揃いな石積は趣がある。
西側突堤 Molhes da Barra do Rio Grande の真ん中にはコンクリート床があり、その上に2本のレールが敷かれていて、それが突堤の途中、海岸から2.8km地点まで続いている。
上はウィンドサーフィンのような三角帆、下はトロッコ台車のような風力で動く乗り物 vagoneta があって、多分観光トロッコになっているものと思われ、突堤の上を往復することができる。
コンクリート床のトロッコの線路横は、自動車は進入禁止だが、自転車で行くことができるだけの幅がある。
乗り物を使わなくても、往復5.6km、ウォーキングで行っても、気持ちよさそうな場所である。
そして最近の話である。
ブラジル最南端の町は、1.5mを超える洪水に覆われて、記事の時点で16日になる。
今回の大洪水時のパトス湖の大西洋への開口部での流出速度は、秒速3.5m、時速10kmである。
記事にはそう書いてあるが計算すると12.6km/hとなるのだが。
人の早足の速度の二倍くらいである。
これは通常の流出量の10倍くらいになるという。
通常時にはパトス湖の水量が全部交換するのに8日、つまり192時間かかるのであるが、今回の大洪水時には湖全量交換が15時間で起きているらしい。
5月23日時点で、海への1秒あたり流出量が1500万リットルだった。
とても興味深いことがある。
「琵琶故知新」というサイトで見つけた琵琶湖の水はどれぐらいの期間で入れ替わるの?に、「琵琶湖の水循環」という図がある。
まず最初に湖からの流出量を比較してみる。
「琵琶湖の水循環」によると、琵琶湖から瀬田川への流出量と琵琶湖疏水への流出量の合計は、年間53.3億トンと計算されている。
比較のために統一する単位を秒あたりトンあるいは立方メートルと決める。
1年は60x60x24x365=31,536,000秒である。
年間流出量をこの秒数で割ると、秒あたり169.0m3となる。
パトス湖の秒あたり流出量は上の数字を立方メートルに換算してやると、15,000m3である。
倍率は89倍の差がついている。
大水害時には90倍だが、通常時は9倍ということになる。
琵琶湖にこの流量だったら大阪は確実に水没するのだろう。
知らんけど。
暫定結論:大水害時のパトス湖の流出量は通常の琵琶湖の90倍
2つの湖の貯水量の差はどうか。
パトス湖 10,140km2、琵琶湖 669km2なので、前者は後者の15倍である。
琵琶湖の貯水量は27.5km3とあるが、パトス湖は水路によって海とつながっているため、世界湖の広さ順位には番外となっていて、貯水量の記載もない。
それでも面積が確定されている湖の中に当てはめると、世界15位と16位の間に入るからなかなか大きい。
最大水深は12mとあるので、平均水深を4mだと見当をつけて貯水量を計算すると、面積×深さ=10,140x0.004=40.56km3となる。
あれ?面積は琵琶湖の15倍もあるのに、貯水量は2倍にも達しないのか。
事実:パトス湖の面積は琵琶湖の15倍
暫定結論:しかしパトス湖の貯水量は琵琶湖の2倍以下
最後に湖全水量交換時間あるいは滞留時間である。
単純に貯水量を流出水量で割ったものと考える。
先のサイトによると琵琶湖の水が交換するのには4.7年かかる。
大水害時パトス湖の全水量交換は15時間という最近の報道による数字を信じよう。
4.7年は24x365x4.7=41,172時間であるから、両者の比率は2,745倍となり、非常に大きな差がついた。
暫定結論:パトス湖の水の滞留時間は琵琶湖の2,745分の1に過ぎない
パトス湖についての数字に辻褄が合っているのか確かめる時が来た。
パトス湖の貯水量であるが、海への1秒あたり流出量と滞留時間から計算できるはずである。
すると15時間=60x60x15=54,000秒だから、この秒数に15,000m3を掛けてやると、810,000,000m3つまり0.81km3である。
もう一回あれ?である。
さっき適当にパトス湖の平均水深を4mとして計算した貯水量の50分の1にしかならない。
4mの50分の1は8cm、平均水深がたった8cmなんてありえない。
どこが怪しい数字かといえば、パトス湖の滞留時間がたった15時間ということはありえないと思える。
データが不足していて確認することはできない。
大体パトス湖上流のグアイバ湖の大水がこの湖下流地域に達するのに9日かかると記事内の別の箇所で書いてあるのに、たった15時間で湖の全水量が放出されるというのは、なんとも理解できないのである。
水そのものが15時間で入れ替わるのに、波つまり水位差が到達するのに9日かかるということがあるのだろうか。
2024年6月1日時点で、パトス湖上流のポルト・アレグレがようやく氾濫水位を下回ったが、下流のペロタスはまだ1.5m位水没している。
抜けるような晴天でありながら、上流の洪水が到達して、街を覆う水が徐々に増えていくのを見るのは、全く奇妙な感覚だと思う。
結局何が正しいのかはわからないが、それがわかっただけで徒労ではなかったとしよう
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