2020年4月30日

コロナでスペインと同じにならないブラジルの謎

ブラジルでCOVID-19の初めての死者が出たのは2020年3月17日であり、インターネットラジオOTTAVA(オッターヴァ)の番組、本田聖嗣さんのOttava Frescaの「世界のニュース」関連の投稿を2020/3/24にしたときは、スペインの13日遅れと誤認してしまったが、実際は4日遅れであった。

その時添えた言葉は、「国民の性格や習慣と国のゆるさがそっくりなため、ブラジルは間違いなくイタリアやスペインの後を追っています」であったのだが、現実にそれは起きていない。
スペインの大感染をブラジルが4日遅れでたどっているわけではない。

死亡の実数で比較すると、同じ5千人であっても、人口5千万人の国と2億人の国では4倍の重みの差があるわけだから、指標としてよく使われる10万人当たり死亡数で比較する。

スペインブラジル日本
死者初出日2020/3/132020/3/172020/2/14
10万人あたり死亡数32.462.140.28
死亡数15,1754,543351
人口(千人)46,755212,559126,476
人口密度(人/平方km)93.725.4346.9
65歳以上割合(%)20.09.628.4
3・4月平均気温(℃)11.5520.7511.30
3・4月合計雨量(mm)73240242

死亡数は2020/4/27発表のもの
人口関係3指標は2019年の国連ファイルより
気候関連2指標は、マドリード、サンパウロ、東京、Wikipediaより

これを見るとすぐに気づくのが、死亡数が大まかに見て、
スペイン >(10倍)> ブラジル >(10倍)> 日本
である。

日本の死亡数がごく少ないのは特筆ものだが、今回は「国民の性格や習慣と国のゆるさがそっくり」な、スペインとブラジルの比較に注目する。

人口密度を見ると当然予想されるように、広大な国土のブラジルが低く、日本が非常に高い。
しかし、人間が密接に集中する都市部で比較すると、ミクロな差異が大きい。
ブラジルのスラム街は、小さな建物がぎっしり詰まっている上に、一部屋に住む人数が多く、距離を取ることが極めて難しい問題がある。
ここにコロナウィルスが入ると、急速に感染拡大する可能性が大きい。

国の全人口に占める高齢者の割合をみると、スペインはブラジルより多数の死者が出る要因が明らかにある。
しかし超高齢な国の一つである日本の死者数が少ない説明はつかない。
日本の老人はスペインの老人と比較して、数世代の大家族ではなく、子供や若者がいない、独居や老人夫婦のみの家庭が多いのではないだろうか。

3月と4月の平均気温の平均は、スペインと日本がほぼ同じで、温度の高い場所でウィルスの働きが鈍るという仮定に立つと、これもどうして日本の死者数が少ないのか説明できない。

3月と4月の降水量が他の2つよりかなり少く、乾燥しているスペインで死者が多いのは、低温と乾燥が合わさると死者が多くなるのではないかという仮定はできる。

昨日のニュースでは看過できない推定があったので書いておく。

リオデジャネイロの登記所で死因不定の死亡記録が急増
専門家は疑いのある患者のコロナウィルス検査不足が原因と見る。
Notificações de mortes por causa indeterminada disparam em cartórios do Rio
Especialistas culpam a falta de testes para coronavírus em pacientes com suspeita da doença.
Por Jornal Nacional 28/04/2020 21h03 Atualizado há uma hora

つまり、COVID-19と思われる病気で死亡した人がいても、必ずしも検査が行われないので、COVID-19と断定できずにより一般的な重症急性呼吸器症候群 (síndrome respiratória aguda grave, Severe acute respiratory syndrome = SARS)や、不特定呼吸器疾病 doença respiratória indeterminadaとかで記録されていることがある。
”残念なことに記録されているCOVID-19による死者数より約50%多いのではないかと思われる、とFiocruzの研究者は言った。”

そこで表のブラジルの死亡数を50%よりもっと潜在していると仮定して倍にしてみたのが、
スペインブラジル日本
10万人あたり死亡数32.464.280.28
である。
これでわかるように、それでもスペインには届かない。

このデータと比較できるように、さらに7日遡る2020年4月20日のものだが、ヨーロッパの3つの国の人口10万人あたりのCOVID-19死亡数を書き写しておく。

人口1023万人のスウェーデンでは4月20日現在、新型コロナウイルスの感染者数が1万4000人を超え、1580人が死亡している。
4月20日現在、人口536万人のノルウェーでは、新型コロナウイルスの感染者数は7100人を超え、181人が死亡。
人口550万人のフィンランドでは感染者数が3800人を超え、94人が死亡している。

10万人あたり死亡数
スペイン32.46
スウェーデン15.44
ブラジル(2倍)4.28
ノルウェー3.38
フィンランド1.71
日本0.28

スペインブラジル日本は2020/4/27のデータ
スウェーデン、ノルウェー、フィンランドは2020/4/20のデータ
ブラジルのみ故意に2倍にしてある

スウェーデン政府は国民に速やかに集団免疫をつけさせる政策をとっているそうで、一方スペインは政策を議論する以前に感染が爆発して、否応なく集団免疫をつける方向になってしまったといって良いだろう。

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