2025年2月14日

ブラジル闇バイト老人の生体情報貸し

Operação da PF investiga suspeitos de conseguir ilegalmente benefícios e empréstimos consignados para idosos

日本でもマイナンバーカードの偽造集団があるそうであるが、ブラジルで最近生活保護と、先に書いた委託融資の詐取を行っている詐欺団が摘発された。

詐欺団はわかった分で2300万レアルを詐取した。
発覚した生体情報貸し老人は21名であるが、300人分の登録がなされていた。
闇バイトするのが若者でなく老人であるのは、BPCの対象になるのが障害者でないならば、65歳以上の高齢者であるため、少なくともそのような外見の人でなければならなく、若い人ではできないからだ。
一人で30人に化けたものもいた。
日本の生活保護と同じように、毎月の掛金(保険分担金)を支払うことなくもらえるBPC(継続支給恩典)の金額は、1か月あたり最低給料(1,518レアル)にはるかに及ばない600レアルであるから、1回分の金額は少ないが、うまくいけば毎月必ず入金があるから、後には時々要求される受給資格適合確認をうまく騙せばよい。

日本の例に当てはめて簡単に説明すると、闇バイト老人の生体情報を利用して架空の貧困老人を作り上げて、生活保護を不正に受け取るようなものだ。
以下犯罪の手順が説明されているが、本人出頭が必要な場面では、30の架空登録をした闇バイト老人は、異なる30か所で手続きをしたのだろうか。
闇バイト老人は詐欺団から報酬として、詐取した不正受取金の一部を受け取っていた。
バイト内容を知らずに騙されたのではなく、悪事を働いている自覚がなければできない仕事である。

  1. 闇バイト老人は生体情報、つまり指紋と顔写真を提供する
  2. それを元に偽造グループは、Certidão de Nascimento 出生証明書、CPF 自然人登記番号、Carteira de Identidade 身分証明書、Título de Eleitor 選挙人証を偽造する
  3. 偽造書類を使い、銀行口座を開設して、さらに国の CadÚnico つまり低所得者対象の福祉単一登記に登録する
  4. INSS 社会保険院からBPC(継続支給恩典―日本で言えば生活保護のようなもの)を受け取る、また empréstimo consignado 委託融資を契約して融資金を受け取る

1人分の生体情報を使って複数の架空人登録をするためには、当人の悪意がないと不可能であろう。
それが可能であるということは、ブラジルの個人登録管理制度のもとでは、一人の生体情報を使って何人もの架空の個人登録をすることが、システム的に可能であるということである。

日本の統一登録であるマイナンバー、そのカードの作成には生体情報が入ると思うが、誰かが新規登録するときにその生体情報と、すでに登録されている生体情報を照合して、同じ生体情報を使いまわしすることがないようになっているのだろうか。
最近は現場へ行かずに家からオンラインで登録や認証する場面が多いのだが、AIの力を借りて顔写真と指紋を新たに生成して、自分・他人の生体情報を使いまわしすることなく、全く新しい架空の個人を創作して登録をすることは不可能なようにシステムはできているのだろうか。
考え始めるとなかなか厄介な問題だと思う。

2025年2月13日

年金生活者を借金漬けにするブラジル

empréstimo consignado 委託融資

INSS: 全受給者の約40%が委託融資を借りている
INSS: quase 40% dos beneficiários têm algum empréstimo consignado ativo

前回は学校で学ぶ児童・生徒の給食の話から加工食品の話が始まった。
今回は年金をもらう高齢者の話をしよう。
融資の仕組みについてである。

empréstimo consignado と名付けられた融資である。
委託融資―ちょっと訳しにくいのだが、つまり年金受給者や公務員や民間のサラリーマンのように、毎月の収入受取が確実な人に銀行が融資して、返済は年金や給料の支給にかかわる役所が支給金から天引きして銀行に渡す仕組みの融資である。
委託とは、銀行が取り立てを給与支払者に委託するという意味なのだろう。
貸す側にとっては貸し倒れの心配が非常に低く、そのため利率も他の融資と比較して低い。

Instituto Nacional de Seguro Social (INSS) 国立社会保険院は、2025年1月に4千万人以上の恩典受給者を数える。
全くの余談だが、前回のブラジルの高等教育を除く公立学校で学ぶ学童・生徒の総数が、偶然同じ4千万人であった。
そのうちの70%は最低給料(2025年は1,518レアル、1レアル約26円として大体39,500円)を受け取る受給者である。
INSSは老齢年金、被扶養者の遺族年金、日本で言えば生活保護に当たると思われる Benefícios de Prestação Continuada (BPC) 継続給付恩典を支払っている。

そして4千万人のうちの38.6%にあたる1,545万人の受給者が、2025年2月6日時点まで有効な委託融資契約を少なくとも1つ結んでいる。
つまり銀行から金を借りている。

借金をしている受給者の割合が4割近いというのは、各人がどんな意識を持って借りているのかわからないが、随分多くないか?

委託融資の最大返済期限が84か月(7年)から96か月(8年)に伸ばされた。
返済期限が伸ばされても借り入れ利息は変わらないのであれば、支払う利息総額は大きくなるはずである。
でも一月あたり支払金額は小さくなるから、借り手にとっては気が楽になるはずだ。
そして借金を乗り換えながら、決して完済することなく借金漬け生活を続けて、銀行だけが儲けることになるのだろう。

どこかで歯止めをかけるように、年金や給料など収入額と融資金額の比率や、最高金利は決められている。

2024年の平均年利は次の通り

  • INSS受給者の委託融資 21.9%
  • 公務員の委託融資 23.8%
  • 民間の正社員の委託融資 40.8%
ちなみにブラジルの基準金利は年利13.25%
日本の常識から見ると一桁違っているのではないかと感じられるかもしれないが、間違いなくこれで合っている。

2025年2月9日

加工食品と超加工食品

Comida processada 加工食品
Comida ultraprocessada 超加工食品

Governo reduz o emprego de processados e ultraprocessados na merenda das escolas públicas
Por Jornal Nacional
04/02/2025 21h30

ブラジルでは4千万人の児童・生徒が15万の公立学校で学ぶ。
確か初等中等教育期間は11年だったと思うので、ざっと割り算してみると1学年につき360万人となる。
日本の年間出生数とか共通テストの受験者数などから見ると大した数だと思う。
この数字の外に私立学校で学ぶ子どもたちも加わるのである。

さて連邦政府は、州政府や市政府が公立学校で供される給食の食品について次のように決めた。
加工食品と超加工食品の学校給食での購入金額にして、2025年の目標は材料費全体の15%、2026年には10%までとすることを目標とする。
現行は20%までとなっている。

これから書くのは、ブラジルで言う加工食品と超加工食品の違いは何かということだ。
当記事内に説明がある。
原典 Guia Alimentar para a População Brasileira da Ministério da Saúde 保健省のブラジル国民のための食品ガイドから記事に引用された。

  • Comida processada 加工食品
    自然の食品に砂糖、塩あるいは調理に使われるその他の材料を加えたもの

    • legumes na salmoura 野菜の塩漬け
    • extrato de tomate トマトエキス
    • carne seca 乾燥肉
    • peixes enlatados 缶詰の魚
  • Comida ultraprocessada 超加工食品
    加工食品よりさらに加工工程が増し、砂糖、塩、油脂以外の材料を必要とする

    • achocolatado ココア飲料
    • biscoitos ビスケット
    • barras de cereal シリアルバー
    • macarrão instantâneo 即席麺
    • salgadinhos スナック菓子
    • refrigerantes 清涼飲料水

わかったようなわからないような区別だ。
でも超加工食品は甘すぎ、塩辛過ぎでいかにも体に悪そうな気がする。
加工食品の範疇は、日本で言えば和食の漬物やツナ缶に見るように、かなり身近なものである。
保存のために加える砂糖、塩、油脂などの量が生食に比べて過剰になることは想像できる。

少し意外だったが、少なくともここで引用した加工食品、超加工食品の定義に、食品添加物の有無は全く関係していない。
超加工食品だからといって、添加物ドバドバ使われているというわけではない。