2014年4月27日

ブラジルに鉄ちゃんはいない

軌間 en. guage po. bitola

鉄道ファンをいつから鉄とか鉄ちゃんとか呼ぶようになったのだろう。
〇〇鉄には種類が多い。
http://nanapi.jp/108576/
には36種類があげられている。

ブラジルに鉄ちゃんはいない、と思う。
ブラジルでは大都市のメトロ(metrô 地下鉄)や近郊電車(trem urbano)を除くと、鉄道で移動する機会はほとんどない。
わずかに残っていた旅客路線も、航空機どころかバスより遅いので、近年は景色の良い観光路線しか残っていない。
都市間高速列車建設の熱意もない

だから趣味的研究や撮影・録音・乗車体験の対象にするという、鉄道や列車を愛する文化は程遠い。
メトロは主に都心部を走るので、あまりおかしな事件は起きにくい。
しかし、近郊電車は大都市圏内の都市間を結び、都心と隣の都心の中間部にはファベラ(favela)のような怪しい地域を通ることが多い。
また、中心都市から離れるほど当然地価は安くなるので、必然的に中心都心の住民と比較して所得の低い層の住民が長い通勤時間を強いられることになる。
そのため、近郊電車がストライキや故障のため運行が止まったりすると、腹立ちまぎれに投石したり放火するという、極めて野蛮な方法でしか鉄道を楽しむことができない。
これは鬱憤ばらしに過ぎず、楽しみといえるかは甚だ疑問で、いまさら民度が低いと嘆いても始まらず、ただただ気の毒ではある。

パラナ州の鉄道はマット・グロッソ州よりはマシだが、合格点には程遠い
Ferrovias do PR são melhores que as de MT, mas estão longe do aceitável
http://g1.globo.com/economia/globo-rural/videos/t/edicoes/v/ferrovias-do-pr-sao-melhores-que-as-de-mt-mas-estao-longe-do-aceitavel/3291737/
(余談であるが、ブラジル産の冷凍鶏肉がどんな環境で屠殺・食肉加工・出荷されているか興味のある方もこのリンクの画像(4m43s)を見るとよい)

ブラジルの南部にパラナ(Paraná)州がある。
北はサン・パウロ州、南はサンタ・カタリナ州に接し、東側は大西洋、西側はラ・プラタ川の上流パラナ川をはさんでパラグアイ、アルゼンチンと接する。
そう、イグアスの滝のあるところだ。
州都クリチバ(Curitiba)は、2014年ワールドカップの会場12都市のひとつだ。

パラナ州西部カスカベル(Cascavel=ガラガラヘビ、この毒ヘビの多い土地なのだろうか?)の協同組合Coopavelは日本・中国・アラブ諸国・ヨーロッパへ鶏肉の輸出をしている。
上リンクのビデオ1m30s位に、日本向け包装のアップが映る。
輸出される鶏肉の80%は冷凍コンテナに入れられ、鉄道で運ばれる。
その量は年間34万トンになる。
冷凍コンテナは、マイナス20度の低温を保つことができるが、大西洋に面するパラナグア(Paranaguá)港までの道は遠い。
カスカベルからパラナグアの距離は730km、6日から7日かかる。
730km走るのに7日間?!
1日たった100キロだけ?!

東京から東海道新幹線を経て山陽新幹線に入り、広島県東部の福山までの距離に匹敵するのだが、
http://fukuyama-kanko.com/access/index.html
をみると、日本の新幹線は約3時間40分で走破する。

貨物列車の編成は最大50両、保線が悪いので、車輪が通るたびに線路は沈み込む。
軌間は小さく、1000ミリメートルである。
狭軌のため、連結される車両数は制限され、しかも列車は速度を上げられない。
平均速度は時速25kmを超えることはない。
旅程中2回、駅に停車して、冷凍状態を保つためにコンテナに電源を接続する必要がある。
カスカベルターミナルを出発し、荷積みコンテナが往路目的地パラナグア港ターミナルで荷降ろしされて、空コンテナを貨車に積んだ復路がカスカベルで終わる一サイクルが、平均12日の日程である。

日本の在来線の軌間は狭軌=1067mm、新幹線の軌間は標準軌=1435mmとなっている。
軌間1000ミリメートルってどこのチンチン電車か?と調べてみる。
http://e-tochigi.com/blog/blog.php?key=11584
をみると、日本の路面電車の軌間は狭くても1067mm、標準軌のところもあり、1000mmなどという狭軌はないことがわかった。
路面電車はなかなか侮れない。

近畿日本鉄道の路線、近鉄内部・八王子線(きんてつうつべ・はちおうじせん)は、軌間762mmの特殊狭軌線(ナローゲージ)という。
これはトロッコかと思ってしまうが、極めて特殊な例だろう。
鉄分が多少ある私は見てみたいが、一生訪れる機会はないように思う。

素人考えでも、軌間が大きいほうが当然幅の大きい台車を使用できるから一両の輸送力は大きく、荷物の偏りや横風や路面の傾斜など横揺れの力を受けて脱線する危険が低いと思われる。
反対にそれだけ線路幅が広くなるから、車両そのもののコストと、線路施設のコストは大きくなり、カーブの大きさなど地形的な制約もありそうだ。
大きな輸送力が求められない路線だったら、オーバースペックとなりかねない。

パラナ州の輸送力増強と輸送コスト削減の決めては、新線の建設であるが、パラナ州西部とパナラグア港を結ぶ新線建設コストは60億レアルとされ、その計画実現性は現在のところ全く無い。
日本でもかって軌間統一のため行われた、同じ線路上の軌間拡張工事という手もあるが、路盤工事も必要そうで、工事区間は運行が難しそうだ。

サンパウロへ行くとメトロを使うことはあるが、軌間はとても広い。
資料では、一番よく使う1号線-青線(Linha 1 - azul)は広軌1600mm、新しい4号線-黄線(Linha 4 - amarela)は日本の標準軌1435mmとなっている。

クリチバ-パラナグア間には週末観光列車が運行されていて、一日でパラナグアまで往復している。
昔旅行したのだが、これはなかなかおもしろかった。
ブラジルの観光列車だから、ギター片手に歌いっぱなしのグループがいたり、食堂車ではビールが飛ぶように売れたり、静かな趣きのある旅は全く期待できない、賑やかな旅であったが、景色は良いし峡谷走行のスリルがある。

https://www.google.com.br/search?q=curitiba+paranagu%C3%A1+trem&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=XT9cU67hCsLEsASVsoGgBA&ved=0CDIQsAQ&biw=1100&bih=687
に画像がある。

クリチバで乗車前、また途中駅で停車したら線路を見ることをすすめる。
1000ミリメートルの狭軌を実際に目にすると、谷底へ落ちそうなそのスリルも倍増すること間違いない。

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