2024年3月26日

誇っていいデングワクチンは日本製

ブラジル中で大流行中のデング熱は、確認患者数が百万人を超えた。
この病気には特効薬はなく、かかってしまったら対症療法しかないのだが、ワクチンが存在する。

日本の武田薬品 (Takeda Pharmaceutical Company Limited) の製品で、商品名は"QDENGA"、多分ケデンガあるいはキデンガと呼ぶのだろう。
90日間隔で2回接種する。
効果はデング熱の4つのタイプ全部に対して、恒久的な免疫を作るもののようだ。
インフルエンザワクチンのように毎年とか、コロナワクチンのようにそれより短期間に接種を繰り返さなければならないような面倒なワクチンではない。
でも武田薬品は、熱帯地方でしか需要のないだろうこの病気のワクチンを、よく開発してくれたものである。

公共保険外でならば、ある診療所の宣伝をみるとR$ 390,00(390レアル)で処方してもらえる。
現在の為替レートは1レアル=30円であるから、計算すると11,700円となる。かなり高価なものだ。

適用年齢は4歳から60歳であり、この年齢帯なら処方箋を必要としないが、それ以外の年齢の場合は医師に受診して処方箋が必要である。
対象年齢で医師の受診を必要としないので、多分禁止事項や副反応の心配は少ないのだろう。

公共保険の場合現在、ワクチン供給量の関係から、デング熱が大流行中の五百あまりの地方自治体(市)において、児童からローティーンにあたる10歳から14歳に限って接種してもらえる。
この年齢帯が、デング熱に罹って入院が必要になる可能性が高いと言われているからである。
幼児とか老人が重症化することが多い普通の病気と比べると、対象年齢を見て奇異な感じを受ける。

これまで私的保険あるいは自由診療でのみしか手に入らなかったワクチンであるが、未曾有の大流行のために保健省が扱うようになった経緯がある。
しかしワクチンの分配に問題がないわけではない。
まず、製造供給が一社だけであり供給量に限りがあるため、公共保険が割り込んで分捕るような形になって、自由診療の病院でワクチン不足ぎみになった。
一番困るのは、90日後の第2回接種のときにワクチン在庫がなく入荷を待たされる事態が起きる。

一方で、公共保険が確保したのは大体120万回分であるが、ワクチンを求める人が少なく、こちらではワクチンが余り気味になっていて、約三分の一の40万くらいしか使用されていない。

どんな病気にも絶対罹りたくないから、できることは金がかかっても構わないから何でもするという人がいる一方で、罹ったときの症状が多少辛くても、死亡率が低い病気なら何もしないほうが得策と思う人や、根っからのワクチン忌避者に生まれついた人など、様々な考えがあるからこんなことになっても仕方ない。

2024年3月12日

デング熱の経験

ここのところデング熱関係のエントリーが続いたのにはわけがある。
2024年にはいってブラジルはデング熱の大流行に見舞われている。
それだけでなく私自身がデング熱に罹ったからだ。
ごく簡単に経過を書いておこう。

  • 第1日 早朝寝ている間に悪寒を感ずる。体温38度台、食欲減退
  • 第2日 体温38度台、頭痛、食欲減退
  • 第3日 体温37度台、頭痛、食欲減退
  • 第4日 体温37度台、頭痛、食欲減退
  • 第5日 体温37度台、頭痛、食欲減退
  • 第6日 体温36度台、食欲減退
  • 第7日 体温平熱、食欲回復、手のかゆみ
  • 第8日 体温平熱、食欲回復、手足のかゆみ
  • 第9日 体温平熱、食欲回復、手のかゆみ
  • 第10日 記録終了

体温に関しては、家に2つの体温計があるのだが、最初の数日使っていた電子式がどうも温度が低めに出るような気がして、途中から水銀体温計に変えたので、結局のところ水銀体温計のほうが正しい体温を示すと思われるが、正確な体温はよく分からなかった。

第2日に公共の総合診療所 (Unidade de Atendimento Integral)へ行った。
普通なら熱止めの薬を適当に選んで薬局で買って服用して様子を見るのだろうが、デング熱の場合には、普通よく使われるアスピリン系解熱剤は、効果がなかったり逆に悪化の原因となったりするという知識があったので、自己診断はせずに、2日めに診療所へ行ったのであった。
採血、血液検査となり、結果を待つ前に点滴となった。
前日からあまり食べてないから、栄養補給にはなっただろう。

新型コロナのばあいはパンデミア pandemia だったが、このデング熱の場合はエピデミア epidemia(汎ではない)流行と言われているので、診療所の中に点滴コーナーができていて、後ろに番号が書かれた廊下のベンチに患者は並んで点滴を受けていた。

一度家に帰ったが、指示されたようにその日の夜に診療所へ戻ると、血液検査の結果が出ていた。
疫学的検査をしたようには見えなかったが、血球などの通常の血液検査はしたのだろう、血小板が減っているからデング熱だという診断が出され、処方箋をもらった。
デング熱には4つの型があり、そのうちの一つに罹るとその型には終生免疫ができるが、その後に他の型に感染すると、2回目の発症時には症状が強く出るから注意が必要だ、といわれている。

  • 経口補水塩類 SRO (Sais de Reidrataçãp Oral)1袋を1リットルの水に溶かした溶液を用意する
  • 経口補水塩類溶液を1280ml、水、ココナッツ水、茶類、ジュース類、牛乳のようなその他の水分を2560ml、合計3840mlの水分を1日に摂取する
    ただしアルコール飲料、炭酸飲料は飲用しない。
    午前、午後、夜の時間帯に三分の一ずつ摂取する
  • 解熱のためにはパラセタモール Paracetamol 別名アセトアミノフェン Acetaminophen 750mg を6時間毎に服用する

前にこのブログに書いたように、出血性デング熱へ重症化するのを防ぐために、大量の水分を取らなければならない。
確かに処方箋はそういう指示をしている。
1日に3.8リットルの水分を摂取というのは、午前中にコップ7杯、午後にコップ7杯、夜間にコップ7杯ということである。
なかなかの大量なのであるが、幸い知人が言っていたような、「水を大量に飲めというのだが、飲むと口の中が金属の味がして非常に不味く、とても大量に飲めるものではない」症状が出なくてとても助かった。

2024年3月10日

デング蚊と戦う小魚

デング蚊の繁殖と戦う魚種
Espécie de peixe ajuda no combate à proliferação do mosquito da dengue
Jornal Nacional
06/03/2024

蚊の幼虫つまりボウフラを食べるため、池やプールのような大量の静水がある場所に放される魚がいる。
うちにもこれがいる。
学名 Poecilia reticulata、つまりグッピー"guppy"である。
しかし水槽で飼育される観賞用品種のような、美しい色や模様を持ってはいない。
グッピーのページにある上の写真のような野生型である。
ポルトガル語では通称名 barrigudinho というが、形容詞かつ名詞である barrigudo, barriguda が「太鼓腹の〔人〕」という意味なので、それに指小辞がついているから、強いて訳すと「腹ぷっくり小魚」とでも呼べるだろう。
この他にも gúpi(これは英語名発音をポルトガル語表記にしたものだと思う)、lebiste、guaru と、様々な名前で呼ばれていることがわかった。

この魚種の衛生目的利用は、1930年代にサンパウロやリオデジャネイロのような大都市で、マラリア対策として行われてきた。
デング蚊とマラリア蚊は異なるが、現在はデング蚊 Aedes aegypti 繁殖抑制に使われるように、手法が改良された。
研究によると魚一匹は、1日に70から80のボウフラを捕食する。
体の大きさの割によく食べるものだ

最近のデング蚊撲滅キャンペーンでは次のように言っている。
「一週間にたった10分だけ、家の周りや庭を観察してボウフラを退治しよう」
容器に溜まった水だったらひっくり返すだけで良いが、ひっくり返せないならば、排水するか殺虫剤を撒くかとなる。
根拠は、産卵された蚊の卵が幼虫、蛹への変態を経て成虫となって飛び立つまでが1週間なので、そのどこかで生活環を断ち切るということである。

グッピーは幼虫や蛹だけでなく、水辺に成虫の蚊が産んだ卵も食べるそうである。
ボウフラが湧いたバケツにグッピーを入れると、ボウフラを見つけるまでは当て所(あてど)なく泳いでいるが、見つけると水ごと一気に吸い込んでくれてなかなか面白い。
面白いだけでなくデング蚊対策の頼もしい味方である。

その後詳しく調べていたら、グッピーはカダヤシ目カダヤシ科に属すると書いてある。
カダヤシとはあまり聞いたことのない名前だ。
ココヤシとかパームヤシとか、ブラジルにはヤシ類は多いがその一つの名前なのかと勘違いしそうだ。
なんとカダヤシとは当然ながら「カダ椰子」ではなく「蚊絶やし」なんだという。
英名も Mosquitofish または Topminnow ということで、ボウフラを捕食するその食性がそのまま名前になっている。
道理でボウフラ退治が得意なわけだ、と納得した。

それならば、ポルトガル語で「腹ぷっくり」なんて名前ではなく、mata-mosquito「蚊殺し」とか come-mosquito「蚊食い」とか、日本語や英語に倣った、強面する名前にしてやっても良いのではないかと思う。
そんなことを思っていたら、既に peixe-mosquito 英語名そのままの魚がいるではないか。
これはグッピーと同じカダヤシ科ではあるが、別属の Gambusia affinis につけられた名前だ。
写真を見るだけでは peixe-mosquito = Gambusia affinis と barrigudinho = Poecilia reticulata の野生型の区別がつかない。
この件から外れるが、似ているが異なるメダカとカダヤシの違いが図解されていたのが興味深い。

2024年3月9日

デング蚊の見分け方

デング蚊と普通の蚊の違いはこうだ
Especialista explica diferenças entre mosquito da dengue e pernilongos
Jornal Nacional
02/03/2024

デング蚊 mosquito de dengue

黒に白の斑があり、日本の藪蚊と似ている
デング熱だけでなくジカ熱 (Zica)、チクングニア熱 (Chicungunha) も媒介する
昼間、特に早朝、午後遅くに吸血活動
低空飛行のため、人の脚を刺すことが多い
きれいな静水で繁殖
正式に区別したいときは種名 Aedes aegypti(和名ネッタイシマカ)で呼ばれる
日本のヤブカ (Aedes albopictus) と同属

(普通の)蚊 pernilongo / muriçoca

茶色く、脚が長く、日本のアカイエカに似ている
フィラリア症 Filaríase / 象皮病 Elefantíase を媒介、最終記録は2017年、レシフェ市
西ナイル熱 Febre do Nilo Ocidental を媒介、最近5年で7件、ピアウイ州、トカンチンス州
夜行性であり夜に吸血活動
きたない水で繁殖
属名は Culex、和名ではイエカ属

2024年2月6日

2024年のキリスト教移動祝日

米国のカーニバルで有名なニューオーリンズのサイトがあって、2060年までのMardi Gras(マルディ・グラ)の日付がここでわかる。
Mardi Grasとはフランス語で確か「肥えた火曜日」と言う意味だったと思うが、ブラジルでは普通にTerça-feira de Carnaval「カーニバルの火曜日」と呼ぶ日である。
カーニバルがキリスト教行事かというと巨大な疑問であるが、少なくとも日付の決め方だけは教会に従っている。
有り体に言えば、謝肉祭というくらいだから、カーニバルで現世の喜びを十分に満悦してから、心置きなく襟を正して四旬節の節制に臨む、という意味をつけられる。
とにかく、キリスト教行事の中には、毎年、天体の月の動きに応じて日付が移動するものがある。

年の後半にある、キリスト教関係で一番有名な日であるクリスマスは12月25日(ブラジルの祝日)、ブラジルでは死者の日(Finados)と呼ばれる万霊節は11月2日(ブラジルの祝日)―これはハロウィン(10/31)-万聖節(11/1)-万霊節(11/2)と続く一連であるが、前の2つは祝日ではない―と、毎年同じ日付に決まっているが、年の前半にある宗教祝日は移動するものが多い。
ついでに言うと、ブラジルではハロウィンは子供の学校行事で楽しむくらいで、同じキリスト教といっても外国の行事のようなものである。
もっともインスタ映えや商業主義のために、近い将来どうなっていくかは予想できない。

2024年の移動宗教祝日を下に一覧表にした。
復活祭の日、2024年ならば3月31日日曜日が、一連の移動祝日の基準になっていると言ってよい。
2023年より9日早い。
2016年から8年ぶりに復活祭が3月中の、早い日付になる。

復活祭の日付の決定方法について過去の記事に説明した。

待降節(Advento)は、クリスマスに備える期間であるが、その第一日は日曜日に決まっていて、11月30日の「聖アンデレ(Santo André)の日」に最も近い日曜日からクリスマスイブまでの約4週間で、最も早い年で11月27日、遅い年でも12月3日に始まる。
アドベント期間には必ず4つの日曜日が含まれる。
2024年は、12月1日、12月8日、15日、22日の4つの日曜日の後、25日クリスマスは水曜日に当たる。
このように、天体の月の動きによって大幅に日付が前後する、年の前半の移動祝日とは、その決め方が全く異なる。

行事日の決まり方2024年休日種類
カーニバル
Carnaval
週末から灰の
水曜日前日4日間
2月12日,2月13日
月火曜日
PF
灰の水曜日
Quarta-feira de Cinzas
復活祭46日前の水曜日2月14日水曜日14時までPF
四旬節Quaresma灰の水曜日から復活祭前日
枝の主日
Domingo de Ramos
復活祭7日前の日曜日3月24日日曜日
聖週間Semana Santa枝の主日から復活祭前日
キリスト受難日
Paixão de Cristo
復活祭の2日前の金曜日3月29日金曜日FN
復活祭Páscoa北半球春分の次の
満月の次の日曜日
3月31日日曜日
ペンテコステPentecostes復活祭の49日後の日曜日5月19日日曜日
キリスト聖体の日
Corpus Christi
復活祭の60日後の木曜日5月30日木曜日PF
ぽつんと年末に孤立
待降節初日
Início do Advento
11月30日に最も近い日曜日12月1日日曜日

ブラジルで国定祝日(feriado nacional - 上表ではFN)、任意出勤(ponto facultativo - 下表ではPF)になっている日と、特に休日になっていない日がある。
任意出勤というのは、条例や労使協定によって、地方自治体、職種組合や職場ごとに、休日とするか勤労日とするか決められる。
大部分の勤め人にとっては、普通の休日となることが多いが、商店は営業するところと休むところがある。

2024年2月5日

2024年のブラジルの祝祭日

今週末は早カーニバルなのだが、祝祭日を調べるのにやはりこれを作っておかないと不便だ。
本当は下のリンクをブックマークしておくだけで十分なのであるが。

左派労働者党ルラ政府になったら、省庁の数がかなり増えて30以上あるのだが、そんなにあると中には聞き慣れない名前の省があったりする。
もう大臣ポストを作りたくてどうしょうもないのが見え見えなのだが、ともかくそれは置いておく。

連邦政府の公共サービス運営・革新省(Ministério da Gestão e da Inovação em Serviços Públicos)は、2024年の祝日と任意出勤についての通達PORTARIA MGI Nº 8.617, DE 26 DE DEZEMBRO DE 2023を2023年12月28日付官報に掲載した。
下の表はその中身である。
条文に断っているように、本来の目的は連邦行政官庁や国営企業の休日を定めたものである。

一連のキリスト教関連の移動休日は、2023年より9日早くなる。
たとえば2023年のキリスト受難金曜日は4月7日であったが、2024年は3月29日である。

11月1日Confraternização Universal世界友好の日FN
2,32月12日,13日月火CarnavalカーニバルPF
42月14日Quarta-Feira de Cinzas灰の水曜日14時までPF
53月29日Paixão de Cristoキリスト受難の日FN
64月21日TiradentesチラデンチスFN
75月1日Dia Mundial do Trabalho世界労働の日FN
85月30日Corpus Christiキリスト聖体の日PF
95月31日PF
109月7日Independência do Brasilブラジル独立の日FN
1110月12日Nossa Senhora Aparecidaアパレシーダ聖母の日FN
1210月28日Dia do Servidor Público federal連邦公務員の日PF
1311月2日Finados死者の日FN
1411月15日Proclamação da República共和制宣言の日FN
1511月20日Dia Nacional de Zumbi e da Consciência Negraズンビと黒人自覚の国定日FN
1612月24日Véspera do Natalクリスマスイブ14時からPF
1712月25日NatalクリスマスFN
1812月31日Véspera do Ano Novo大晦日14時からPF
注:FN = Feriado Nacional 国定祝日、PF = Ponto Facultativo 任意出勤
任意出勤とは、職種や企業や自治体によって働くか休むかが決められる日である。
各人が勝手に自分の都合で出勤したり欠勤したりして良いという意味ではない。

さて昨年の連邦政府による祝日一覧と比較して、かなり増えていることがわかる。
16番と18番のクリスマスイブと大晦日の任意出勤は、前年まで表に載っていなかったものの、民間も含めてかなり習慣化されていたものであるが、今回明文化された。

15番のズンビと黒人自覚の国定日は、これまでは州や市によっては祝日であったのだが(例えばサンパウロ)、これからは正式な国定祝日となった。
ズンビとは、語感がゾンビに似ていると思われるかもしれないが全く関係なく、黒人解放運動の英雄の名である。
ルラ政府によるカレンダーの一番の目玉であろう。

意味不明なのが9番である。
官報には何の説明もなく突然、日付と ponto facultativo と書いてあるだけなのだ。
木曜日の祭日と週末の土曜日の狭間を連結して連休を作る意図なのだろうが、全く記述がない。
謎だ。

12番の10月28日(土)は「公務員の日」(Dia do Servidor Público Federal)で、民間は通常日であるが、連邦の官庁は任意出勤(PF)となる。
前年までは存在しなかった「連邦」という単語が加えられた。
州や市の公務員のことなどどうでも良いのだろう。
偉そうにしているのだろうか。
俗語で「すごい」「ひどい」ことを federal と言ったりするのは、この傲慢さのせいなのかと思ったりする。

以上連邦政府が定める当表に載っている全国一円の休日のほかに、各地で市、地方あるいは州の記念日が数日定められていることが多い。

次のサイトで、任意の過去・将来年の、任意の国の休日が入った月齢付きカレンダーを閲覧・印刷できる(英語・ドイツ語・当国語-ブラジルならポルトガル語)。
このリンクはブラジルの2024年

2023年7月9日

ブラジルの人口は2億3百万人

2020年に実施する予定であったのがパンデミックのためできなくて、後年にまわされたのは東京オリンピックだけではない。
ブラジルの国勢調査もその年に行う予定だったものが、新型コロナパンデミックのために翌年に順延された。
その2021年になったら、これを軽視していたのか、ボルソナロ政権は予算を確保してなくて再び順延、実際に行われたのが昨年の2022年であった。
その集計がようやく出たのがこのほどの2023年6月のことだった。

2022年国勢調査:ブラジルの人口は予想より470万人少ない2億3百万人
Censo 2022: Brasil tem 203 milhões de habitants, 4,7 milhões a menos que estimava
28/06/2023 Jornal Hoje

ブラジルの総人口は、203,062,512人であった。
前回の国勢調査2010年に対する12年間の増加率0.32%は、過去の国勢調査間隔の10年間ごとの人口増加率と比較して、最低であった。

ニュース報道でコメントされた気になる点を書いておく。
詳しい人口統計は別の記事にのせるつもりだが、これは小ネタ集のようなものになっている。
比較は2010年国勢調査と比較した2022年国勢調査の数字である。

大都市圏の人口推移
ゴイアニア大都市圏 +19.9%
ブラジリア大都市圏 +13.7%
サンパウロ大都市圏 +5.3%
リオデジャネイロ大都市圏 -2.1%

10大都市のうち5都市は人口が減少したが、その原因は周辺都市への移出である。
サルバドル -9.6%
レシフェ -3.2%
ベロオリゾンテ -2.5%
リオデジャネイロ -1.7%
フォルタレザ -1.0%

人口が減少した都市上位20のうち6つはリオデジャネイロ州にある
サンゴンサロ -10.3%
インタビューされた女性はサンゴンサロで20回強盗にあったのが嫌になり、隣のニテロイへ引っ越した。
20回?多すぎないか?
でも見方を変えれば、強盗にあってもうまく対処すれば命は大丈夫ということだろう。

ブラジルの5つの地方の総人口に対する割合
南西部地方 41.8%
北東部地方 26.9%
南部地方 14.7%
以上の3地方は12年間に全国に占める割合が減少した。
北部地方 8.5%
中西部地方 8%
以上の2地方は12年間に全国に占める割合が増加した。

ブラジルでも一世帯あたりの住人は減少している
2010年3.31人から2022年2.79人に減った。

一世帯あたりの住人がブラジルで一番多い州
アマゾナス州 3.64人
一世帯あたりの住人がブラジルで一番少ない州
リオグランデドスル州 2.54人

ブラジルで一番人口が多い州
サンパウロ州 44,420,459 全人口の21.88%
ブラジルで一番人口が少ない州
ロライマ州 636,303 全人口の0.31%

ブラジル議会では、国民を代表するとされる下院議員は、人口分布によって各州選挙区の定員が決定される。
そのため人口が多い州の下院議員はそれに比例して多数いる。
簡単に言えば、ロライマ州選出下院議員1人に対して、サンパウロ州選出下院議員は70人いる勘定になる。

一方上院は、州を代表するとされる議員によって構成される。そのため、現在26州プラス1連邦区あるブラジルの連邦構成単位のそれぞれ3名の定員があるため、上院の定数は81名である。
ここではロライマ州選出上院議員も、サンパウロ州選出上院議員も同じ3名である。
上院に限っていえば、選挙人の一票の重みが70倍も異なるということである。
憲法が議員の仕組みをそう定めているので、文句言うわけにはいかない。
辺境州に力を与えることになるのだが、そういうふうに作られているのである。

しかしロライマ州の州都ボアヴィスタ Boa Vista は、全国の州都の中で人口増加率が一番高い。
2010年 284,313人から2022年 413,486人へと、12年間で+45.4%も人口が増加した。
増加要因のひとつとして、陸続きのベネズエラからの移民や難民がある。
ベネズエラ人流入だけでなく、ボランティアのようなそれをサポートするブラジル人もボアヴィスタへ集まってくるのである。

ベネズエラには「相対的な」民主主義が存在すると発言しているブラジルの左派労働者党出身のルラ大統領にとっては、おだてられちやほやされる外遊は気分が良いだろうが、ぜひロライマ州やボアヴィスタを訪問して、ベネズエラから逃げてきた人達を自分の目で視察してもらい、それでも持論を曲げないか見たいものである。